2008年6月27日金曜日

「食べ残し」と食料自給率

「39%」
この数字だが、新聞やTV報道などで盛んに伝えられるので、すっかり定着した感がある。
話題となっているわが国の「食料自給率」を示す数字だ。
最近のTVでも、誰かが
「40%程度の自給率で…」
と言ったら
「正確には、カロリーベースで39%です」
と言いなおされていて、思わず笑ってしまった。
そこまで言うのも、どうかと思うけれど。

さて、ここでカロリーベースで云々と、受け売りの講説をするのは止める。
ただ、気になったのが、関連する報道の中で「食べ残し」の問題が取り上げられていたときのことだ。

つまり、自給率を高める方法として、「食べ残し」の再利用が考えられるとのこと。
「食べ残し」を家畜のエサにすると飼料作物の輸入が抑えられることになり、自給率が向上するというのだ。
外食産業や食品メーカー、コンビニなどの小売から出される食料関係のゴミは、その量にして1千万トン超。聞いただけではピンと来ないが、そのうちで再利用されているのは半分程度という話だ。
その、残りの半分をさらに有効に利用する、というわけだ。

しかし、ここ問題になるのはコスト。
これまでどおり、埋め立てたり、焼却処分する方が処理コストを低く抑えられるので、「有効利用」のためには相応のコストを負担しなければならない。
もちろん、この場合のコストを抑制する技術や仕組みなど研究されていると思うが、ただ現時点で
単にコスト比較すると、従来方式が優るわけだ。

店の食品棚から期限切れを理由に、撤去される「元食料品」をみていると、もったいないと思うことがある。
法的な、あるいは自主的な基準に基づいて、それを処分することはコンプライアンスという観点からして異論はないが、その先の処理方法には知恵の出し処があるのでは。

(別の議論だが、基準を定めるのも私たちなわけで、その基準が適切か否かの見直しも必要であろう。ただ基準が厳しければいい、というものでもあるまいに。そうした基準の厳しさを前面に、一義的に顧客満足度向上に資するためを企図する過剰サービスと、その
サービスにおける企業間競争にも目に余るものがある、そう感じることがあるが、さて。)

ずっと昔のことになるが、私の実家の近所には豚を飼っている農家があった。
そこのご主人が定期的(ほぼ毎朝)にわが家から出された残飯を回収に来ていたことを思い出した。飼育の頭数など不詳だが、わが家だけではなくご近所一帯を一巡して、一輪車に乗せられた何本かの一斗缶が一杯になるほどだったと思う。

この記憶にある残飯回収のことは、随分と昔のことだから、この飽食の時代を背景とする「食べ残し」の問題とは性格が異なるかもしれない。そもそも、当時の一般家庭から出される生ゴミは食物屑などが多くを占め、食べられるのに捨てるという意味での「食べ残し」はほとんど無かったのでは、という印象だから。

そうした食物屑でさえ、家畜のエサに回れば自給率の向上に寄与する構図なのであるならば、今日の「食べ残し」の問題に対する寄与は殊更であろう。

別の記事では大手スーパーのイオンが千葉県下で開始した取り組みのことも読んだ。
県下25店舗から出る弁当や野菜屑を飼料にして育てた豚を関東地方で売り出すという取り組みだ。
そういえば、私の家の近くにあるイオングループの店舗では、かつて同じ材料からだと思うが「堆肥」を作って、無料で配布していたことを思い出した。カレーの臭いのする肥料を貰ってきたことがある。
そのときは、生ゴミの減量への取り組みという企画だったと思うが、こうした食料品の加工や流通に関係している企業の取り組みが与える影響は大きいであろう。

まずは、食べ残しを少なくする、究極は「出さない」という取り組みが必要なのだろうが、それとともに不可避な「食べ残し」を前提とした、その有効な利用が求められる。

<終>


肉の味は飼料の良し悪しに負うところが多いという話を聞いたことがあるが、さて、食べ残しを「主食」とする豚肉の味は如何に? ぜひ、試してみたい。