山楽のラーメン
以前から気になっていたラーメンがある。
伊那市にある「山楽」のそれである。
覚悟といえば大袈裟だが、出掛けるとなると、営業日や営業時間との関係、あるいは本人はもちろん連れの腹具合など勘考しなければならない。とすると、今回は千載一遇の機会だったか?
その前に店の前に行ったときは暖簾が外されていて、目的を達することができなかった。
今回は、暖簾が下がっていることを確認しながら、家人が店の玄関を開けて
「駐車場はどちら?」
と確認してのことだ。
近隣の「いなっせ」にある公共駐車場を使った。
さて、店に入る。
お昼時を過ぎていたこともあってか、店の人が店内で寛いでいる雰囲気。
「やってますか」
の質問は、暖簾が下がっているのに、いささか失礼だったかな?
事前に承知していた「餃子の店」との触れ込みに反して、ラーメンの大盛りと普通盛りを注文。
店主と思しきを交えて、年配の男性2人が厨房にて対応してくれている。
程なく、もう一人のおばちゃんにより運ばれるラーメン。
「大盛りはご主人ですね」
不意を衝かれたあまり意味があるとも思えない質問に、生返事をするも、しかし気持ちはラーメンに向いている。
スープは、油が浮かない、濁りのない色…と、それに違わぬスッキリとした味。
口中にまとわり付かない。
食べ終わった後にも、良くても悪くても何らの後味が残らない。
まるで、喉を通るその瞬間にのみスープの存在を示すだけで、それ以外には一切、目立とうとしない。
とかく「化学調味料」が臆面もなく目立ち、また、それを隠す風でもなく、客の目の前でサッサッとラーメン丼に振る注いで憚らないラーメン屋がある中で、ここの味は全く異なる。
厚すぎず、薄すぎず、程よい食感のチャーシュー。
脂身はほとんどなく、しっかり肉に味がしみて美味い。
今度は、ぜひ、チャーシューメンにしようと思った。
モヤシには好き不好きあろうが、わが家ではいささか不満の声。
茹で上げただけのそれであれば、むしろスープや麺とは反目する存在と思う。
ただ、これまでの店の歴史を尊重すれば、そうそう好き不好きだけで言うこともできまいに。
例えば
「なつかしい味」
とか
「昭和の味」とか、言い古された表現を並べてみても、あまり意味がない。
(そもそも万人に共通する「なつかしさ」なんて危険な作り話だと思うし、まして「昭和の味」だなんて余計に意味が不明瞭になる、と思っている)
となれば、何度でも足を運んで食べたいと思うラーメンのひとつである…とでもしておこう。
(その場では「美味い」と思っても、再訪する気になるかならないか…それが問題。例えば、蕎麦における戸隠の「岩戸屋」さんは、そちら方面に足を向けたら時間が許す限り再訪したいと常に考えている蕎麦屋の一つだ。)
今度は餃子を合わせてみようと思う。
なにせ、「餃子の店」がキャッチフレーズにあるのだから。
その分、腹の加減を調節して臨もうと思う。
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