2007年7月3日火曜日

市田柿

 市田柿は、南信州は伊那谷、天竜川のほとりで生産された良質な柿が原料とされます。これは約600年程前から伊那谷に多く見られた在来の渋柿の一種で、現在の高森町市田地区が発祥の地とされています。諸説ある中でも、当時の飯田藩主が柿の木の植栽を奨励したことで広まったとする説が有力です。

 秋になると、伊那谷の天竜川河岸段丘一帯は濃い川霧に包まれます。こうした気候により市田柿特有の白い粉が育まれるとされています。今日では農家の軒先に吊るされた「柿すだれ」が、伊那谷の秋を告げる風物詩となっています。

 さて、干し柿は全国各地にありますが、この市田柿は昭和20年代に商品化され、現在では長野県を代表する干し柿のブランドに成長しました。

 干し柿は、いまや食物繊維が豊富な健康食品として注目されていますが、 市田柿は特に糖度が高く、肉質が緻密なことが特徴です。

 皮を剥いて糸で吊し、天然乾燥することによって美しいレンガ色に仕上がり、さらに川霧が育んだ粉をふいて、極上の干し柿ができあがります。


<おしまい>