2008年8月14日木曜日

ヘブンスそのはら

「ヘブンスそのはら」に行ってきた。
地元、再発見の旅…というほどの大袈裟なものでもないが、図らずも先の伊那谷道中に続いてのことになった。
この猛暑の夏に、のんびり涼を求めて…とすべきところ、往復約2時間半の軽い山道行も含めての行楽だった。


当地は、「ヘブンスそのはら SNOW WORLD」という言い方が正しいようで、そもそもはスキー場として開発された経緯がある。ただ、そのスキー場に行き着くまでにロープウェイが施設されており、これが冬のオンシーズンのほかは圧倒的な南アルプスの展望を誇り、もうひとつの魅力となっている。

午前10時
ロープウェイ山麓駅前に到着する。
中央道 園原I.C.から至近、車で5分程度の距離にある。ただし、このI.C.は中京方面のアクセスを重視した構造で、名古屋方面からの入り込みと同方面への帰りに利用が限られている。東京方面からの入り込みの場合は、一つ手前の山本I.C.を利用しなければならない。
いかにも、当施設が中京圏をターゲットにしたものかうかがい知ることができる。
それもこれも、隣接する昼神温泉の利用客の利便を考慮したI.C.の配置なわけだ。


駐車場は、全2,000台収容とされているが、これは冬の最盛期を想定してのことだろう。私が到着したとき、山麓駅の前のスペースは1/3程度の入りだったが、午後2時頃、帰る頃にはほぼ満車の状態だった。目にする範囲のナンバープレートは、ほとんどが当地で言うところの県外車のもの。たしかに中京圏方面が目立つ。


大人2,000円のチケットを購入して、ロープウェイに搭乗する。
一切の待ち時間は無く、拍子抜けするほどスムーズだった。
ほぼ、10分間の路程だが、月並みな言い方をすれば「迫力の眺望」とか、「日常の異空間」など、年甲斐も無い興奮を覚えるに十分な雰囲気を持っている。
眼下に広がる伊那の谷間、山肌と遠くに見渡せる南アルプスの山並みは、当地に暮らす者にとっても新鮮な感動を与えてくれる。
周囲山ばかりを見慣れている当地に住む人間にして、そうなわけで、遠方からの観光客にしてみれば、同様の感激は当然のことであろうと思う。


さて、ロープウェイを降りてからであるが、ここからが今日の入り込み客の大多数とは行動が異なった。
つまり、展望台までの行程をリフトによらず、徒歩で行くことにした。
結果的に往復のほぼ2時間半、ガイドによるところの「りんどうコース」と呼ばれるその山道上には、私とわが女房の2人だけで、だれ一人として出会う者が無かった。
とても「貴重な体験」をさせてもらったものだ。

ガイドには展望台間の距離2キロ、上り50分、下り40分とあったが、それぞれ2割、3割り増しの時間を掛けて、タップリと堪能させてもらった(笑)

ただし、女房には超不評で、
上り坂、荒れ道ばかりは、ここまでの人生のようなもの。苦労の連続」
との「お言葉」を頂戴しながら歩いていた。
が、ついに最後の方ではそうした言葉も耐えて、ただ無言で歩くのみになっていた。
いつも、いつも苦労を掛けるばっかりでスマン…と、心で呟きながら、
「山頂に上り詰めたら、そこには達成感が待っている!」
と聞こえよがしの威勢のよい独り言が、ただ空しかった(笑)

そうしているうちに、よくしたものでちゃんと展望台についた。
(戻らず、立ち止まらず、一歩一歩進めれば、必ずどこかにたどり着くものだ。)

1リットル用意した麦茶は、ここまで来る間に飲み干し、汗まみれ。
展望台でまさに涼しい顔をしている他の観光客とは、明らかに様子の異なる2人だった。
事前に調べたところでは、当地における前日の最高気温が26℃とあったが、体感はそんなものではない。
風も無く、直射を浴びるところでは下界と何らの変わりが無い…というのが感想だった。
ただ、昼食にと用意してきた握り飯を摂るためにと、日陰を探しそこに入ったところでは、さすがに涼しさを感じることができた。


「もう歩けない、復路はリフトで降りる…」
そう言っていた彼女だったが、展望台では片道のリフト券が売られていないことを知り、諦めた様子だ。
よくよく考えてみれば、そもそもはスキーリフトなわけで、どこを見渡したって、片道の下りの料金を設定したリフトなど有りっこないわけで、後になって笑ってしまった。

そうこう言いながら、下りのロープウェイも順番待ちなく搭乗でき、すんなり降りてきた。
午後2時。大型バスを降りたばかりで、案内されて搭乗を待つ一団の観光客とすれ違った。バス会社の名前からして、ここでの観光を最後に、園原から中央道経由して出発地に帰着のコースかな…そんなことを話しながら、現地を後にした。

今回が初めてだったが、こ
の秋には富士見台高原ウォーキングコースを試しながら、紅葉を観にこようと思う。

かくして、確実にリピーターを獲得した模様だ。



ところで、観光資源としての当地の評価は如何なるものか?
おそらく往復2,000円のロープウェイ収入が主となるであろう当施設の場合に、冬のスキーがそれであるように、ロープウェイで行った先のアトラクティブをどうデザインするかがポイントなのだと思う。

例えば、黒姫高原のコスモス園(入場料:大人500円)、
富士見高原 ゆりの里(入場料:大人1,000円)のように、テーマとなる花をアトラクティブとして入園料収入を企画するケースにみられるような、特徴的な「何か」が欲しい。

現地には「キティーちゃん」という言葉も踊っていたが、果たして?

外野がどうこう言うは簡単だが、当地にはロープウェイという他には例の少ない資源を有するだけに、もったいない。ロープウェイに加勢する「天然資源としての四季折々の自然」と、もうひとつ「企画されたアトラクティブな資源」が必要だ。

今回、訪れた季節(夏の真っ盛り)のことも多少影響していようが、当地で見えたのはロープウェイとリフトを乗り継いで展望台を往復して帰って行く、それが大半の観光客のパターンだったと思う。
たまたま居合わせた時間帯にもよりだが、下界より割高な食事や飲料、アイスクリームを口にして帰っていく。私たちのように、弁当・飲料を持参する観光客からの収入はロープウェイの料金だけだ。
客単価の増進も肝要だが、動員数の増強、特にリピーターの確保が求められよう。

そう考えたとき、このままでどれほどのリピーターが動員できるのだろうか…、

外野なりに、山頂駅一帯を核とするアトラクティブな企画に期待したい。


資料 : ヘブンスそのはら / 長野県下伊那郡阿智村 / 平成20年8月10日


<完>